担い手
松本 准平

 映画を創りはじめて十数年が過ぎ、不思議に思うことがある。それは実話や実在のモデルをベースにした作品を手掛けることが多くなったことである。

 2017年の作品「パーフェクト・レボリューション」では、友人の 熊篠慶彦(くましのよしひこ)さんをモデルにしたし、2022年の「桜色の風が咲く」では東京大学・教授でいらっしゃる福島智(ふくしまさとし)さんとお母様の令子(れいこ)さん、2025年「長崎―閃光(せんこう)(かげ)で―」では被爆救護を行った看護師、ひいては被爆者の方々に近づくことこそが映画の発端となり、土台になった。

 映画を始めた当初、僕の目的はもっぱら自分のテーマを追い求めることだった。もちろん、自分だけに固執せず、身の回りの出来事や社会の有り様、時代の空気を観察することが良い作品づくりのために必須であろうことは知ってはいた。

 しかし制作を重ねるうちにいつしか、観察は自分の映画づくりにとって極めて重要な要素を持つようになり、さらに「寄り添うこと」こそ最大のエンジンになっていったように思う。
 「誰かの想いを担おう」等とおこがましいことを考えたことはないが、お一人お一人に近づき、寄り添い、傾聴し、心を開くことが、結果的に「担う」ことになっていたとしたら何と幸せなことだろう。

 しかしふと思えば、そのような謂わば「担い」のプロセスを通じて、いつの間にか、自らの心や存在そのものが、引き出され、担われているようにも感じるのである。寄り添うことによって実は寄り添われており、傾聴することによって傾聴されており、担うことによって担われ、また救われているようなのである。

 映画は一人で創るものではなく、人生は一人で歩むものではない。

 救いの手はいつもそばにある。担おうとするとき、その手に気が付くのかもしれない。

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